湯どうふ

『少年時代』

パーマンなどで有名な藤子A不二雄が監督した映画である。一般には、井上陽水の曲が有名だろう。今や音楽の教科書にも載る曲であるが、始まりはこの映画である。

少年時代 [DVD]

少年時代 [DVD]

 

 

背景

戦時中に、東京の学校に通っていた子供が、富山県学童疎開したときの話である。学童疎開には、クラスごと疎開するパターンと、個別に親戚縁者の家に疎開するパターンがあったようである。本作の主人公は後者である。学童ではないが同様の疎開の例として宮脇俊三の例をかつて読んだことがある。

舞台は富山県の朝日町と推定される。鉄道では泊駅として有名である。

主人公の父親は運輸通信省の官僚である。郷里を出て、東京で働いていた折、戦争のため子供を郷里に返したのであろう。

感想

子供の残酷さ

子供の残酷さが描かれている。今ではあまりないタイプのいじめが描かれる。いじめの背景も今とはかなり違うので、その時代についての事前知識も必要である。少なくとも、昔は良かったと手放しで言える、訳ではないことがよくわかる。

「つーつーれろれろ、つーれーろ、つーつれとりしゃん、つれつれとりしゃんとんたん」という歌を主人公は富山の子どもに歌わされる。この歌を歌うことが、富山の子供グループの帰属意識の象徴らしい。無理やり歌わされると主人公は泣いてしまう。すると、周りの子どもたちは「東京が泣いた!」と囃し立てる。

正直この歌が何なのかよくわからない。当時全国的に子どもたちの中で流行っていたのか?おそらく有名な歌なのだろうが、当時のメディアには残らないタイプの情報であり、今日においては無の状態から、歌が存在した事実を掘り起こすのは不可能である。時代を直接知っている人が制作に携わり、しかも映画というメディアだったからこそ伝わる話である。

時代の雰囲気を実写で描くのは、もはや今日では不可能

時代の雰囲気というのは、その時代を知っているものしかわからない。後世の歴史学者は客観的資料をもとに想像することはできるが、主観的経験には遠く及ばない。ましてや、後世の一般の人々がわかるはずがない。

それは実写における俳優の演技、舞台のつくりに現れる。例えば時代劇でも、夕方に再放送されているものと、今新しく撮られたものとは、画面から出てくるすごみが全く異なる。

この作品は、時代のリアリティを実写で表現できる最後の時期に撮影されたものだと思う。バブル前後の映画であるが、画面も人物も、今日では表現できない古さが出ている。特に、校長先生の芦田伸介、写真店主の大橋巨泉大滝秀治は必見である。

アニメと20世紀の時代劇

なので、映像作品として、実写のそれを超越しうるとしたら、アニメである。先日の『この世界の片隅に』はまさに、実写ではもはや実現不可能なリアリティを実現したところが、大ヒットの一つの要因であると考える。

描かれる富山がとにかく美しい!