湯どうふ

「2019年度科学技術関係予算案の概要」を読んで

文部科学省のホームページ上で「2019年度科学技術関係予算案の概要」が公表されている[1]。私が関心をもっているのは若手研究者の育成についての予算である。以下、気になったところを挙げる。

若手研究者育成用の予算

注目した点:卓越研究員の予算が前年度と比べて増額された。特別研究員は微減した(16,857百万円⇒15,627百万円)。若手研究者関連で2つの新規の事業が始まるようだ。内容と予算規模は以下の通りである。

・世界で活躍できる研究者戦略育成事業:240百万円

すでにポストを有する若手研究者を海外に派遣するための渡航費、滞在費を支援する枠組みだと思われる。以前に「国際的な活躍が期待できる研究者の育成事業」という極めてよく似た名前の事業があった。これと同じような事業であれば、上に示す内容の通りである。

・国際競争力強化研究員事業:111百万円(542百万円を要求)

報道によると若手研究者を国際研究コミュニティーに参加させるための事業と思われる。[2]

上の2件については今後、詳細な案内がなされるものと思われる。

若手研究者の海外派遣事業

注目した点:海外学振の予算が増額された。一方で、若手研究者海外挑戦プログラムと外国人学振は減額された。

・若手研究者海外挑戦プログラム:321百万円⇒279百万円(42百万円の減少)

平成29年度から始まった事業である。海外で研究経験のない博士後期課程の学生を海外の研究機関で90日~1年の間で派遣するためのグラントである。平成31年度採用分についてはすでに平成30年中に公募が終っていたが、2019年の1月ごろに2回目の公募が決定した。(2回目の公募を行うことから、てっきり予算が増額されたのかと思いきや、減額されていたので驚いた。どういう事情なんだろうか。)

感想

世知辛い。しかし、情報は集めていかないといけない。


どうでもいいこと

今の人は関係ない話であるが、一昔前は、文部省の在外研究員という制度があり、国立大の教員としての給与をもらいながら、在外研究員としての給与ももらえたらしい。

あと、印象に残ったのは高等学校におけるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業の予算も若手研究者育成の枠組みで用意されているということである。私の通っていた高校もSSHに選ばれていたので、まだやっているんだと思った。予算は2219百万円(前年度比増減なし)。多いか少ないかは中等教育の専門家ではないので判断できないが、素人としては結構あるなという感想である。


[1] http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2019/01/15/1412641_01.pdf

[2] https://newswitch.jp/p/14183

学術指導:産学連携の一形態

学術指導とは企業が大学の教員に学術的な意見をもらうための枠組みである。大学によっては学術コンサルティング、学術相談ともいう。平成20年ごろ、産学連携の新しい手法として誕生した。近年では、国内多くの大学で制度が導入されている。ネットで調べたところ、少なくとも以下の大学で確認できる。


北海道大学帯広畜産大学小樽商科大学室蘭工業大学弘前大学八戸工業大学東北大学新潟大学山梨大学前橋工科大学筑波大学東京工業大学東京農工大学麻布大学名古屋大学名古屋工業大学滋賀県立大学・滋賀医科大学京都大学京都工芸繊維大学京都府立大学京都府立医科大学大阪大学大阪市立大学大阪工業大学広島大学山口大学九州大学九州工業大学


従来からある技術指導の場合、教員は兼業届を大学に提出しなければならない。兼業、つまり本務ではないので、教員は学外で指導しなければならない(例えば[1])。技術指導の場合は、学生指導・学内業務を行う上での時間的な支障となること、兼業であるため様々な制約があることが課題であった。

なお、「技術指導」の用語については、各大学によって異なる場合があるため注意が必要である。例えば、「学術指導の内容として技術指導を行う」と表現している場合、本務であるので兼業届は不要である。技術指導よりもさらに程度が進む、共同研究・受託研究の場合はさらに手続き等々が大変なものになる。

一方で、学術指導では、教員が本務として、学内で企業に指導することができる。指導を希望する企業は大学を経由して手続きすることになる。多くの大学では産学連携本部などの名称で、学術指導の窓口が存在する。コンサルティング費用の相場は明示されているケースは少ないが、1時間当たり1万円以上としている例が複数ある(帯広畜産大学京都大学九州大学など)。

近年、各大学は学術指導の制度を急速に整備してきた。学術指導は従来の産学連携の手法と比べて、教員と企業の双方が利用しやすい制度として設計されていることは一つのメリットである。しかし、何よりも重要なことは企業が大学に支払う経費の一部を間接経費にできることであると思う(例えば[2])。共同研究・受託研究として大学に持ち込まれるまでもない案件を取りこぼさない、あるいは共同研究・受託研究を行ったことのない企業が手始めとして学術指導を利用するといった産学連携の広がりを大学当局は期待することができる。学術指導を契機として共同研究・受託研究にまでつながれば、大学としては間接経費を増やすことができて幸せなのである。

課題としては、学術指導に限った話ではないが、教員が忙しすぎて、学術指導にまで手が回らないことが挙げられる。教員の時間価値を考慮すると、学術指導の相場は時間1万円では収まらないのではないかと思う。


[1]https://www.sangaku.titech.ac.jp/system/lead.html

[2]http://www.obihiro.ac.jp/company/shidou.html

 

 

イノシシ・シカの生食による献血禁止

6ヶ月以内にイノシシ、シカなどの生肉を食べた人は献血できない。なぜなら、E型肝炎ウイルスが血液中に潜伏しているおそれがあるからである。血液製剤にウイルスが混入し、被輸血者がE型肝炎を発症する恐れがあり大変危険である。実際に、死亡事例が発生している。

http://www.jrc.or.jp/activity/blood/news/180309_005178.html

数ヶ月前に、居酒屋で鹿肉のタタキを食べた。タタキなので、赤みが残っている部分がある。食べたのはこのときが初めてである。抵抗感はあったが、店で提供されるくらいだから、大丈夫だろうという考えが非常に甘かった。

その後、献血前の問診で、6ヶ月以内にイノシシ、シカなどの生肉を食べた人は献血できないことを初めて知った。献血ができない理由としては、マイナーな範疇に入るらしい。なぜなら、野生の獣肉を生で食べる文化は地域的に限られるからである。事例が多いのが東日本、特に北海道である。

献血を生きがいの一つにしている人は多いだろう。献血ができなくなるので、獣肉の生食はやめるべきだ。そもそもE型肝炎の危険があるので、完全に火を通してから食べてほしい。